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Deep Breath

楽しさとは何なのか?

快不快の感情を大事にしているか?

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秋田県立美術館, 秋田

勉強が嫌だというときは、あなたはどうするだろか。今回は、人間の感情に深く関わっている扁桃体に機能を紹介しながら、感情が人間にとってどのような役割を担っているのかを紹介します。*1
 

扁桃体とは

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扁桃体は、左右の側頭葉内側部分に位置しており、神経細胞が集合した神経核がいくつか組み合わさった集合体です。その主な機能の一つとして、情動的刺激の検出というのがあります。これは、人間が様々な状況下において事物が自分によって安全で有益か、それとも危険であるかを見分けるもので、生物が生存する上でとても重要なものになります。
 

扁桃体は学習する

桃体には「学習機能」があり、恐怖だけではなく、喜びや期待などの元となる「報酬反応」の結果も全て記憶されます。そして、この判定に従って選択される行動を「情動行動」といい、利益には「接近行動」、不利益の判定に対しては「回避行動」が選択される仕組みになってします。これとは別に、我々動物には「本能行動」として、食欲、性欲に対しては接近行動、苦痛や異常には「回避行動」といった、子孫繁栄のために必要とされる基本的な反応基準が予め定められています。ですが、これだけでは与えられた生後環境に発生する様々な状況に柔軟な対処を行うことはできません。このためには自分が生まれ育つ環境の中で何が危険で何が報酬であるかは生後体験を基にひとつひとつ学習してゆかなければならないわけです。扁桃体の学習機能はこのためにあります。ここでは環境からの入力に対して実際に反応を発生させ、その判定の結果を随時記憶します。このため、扁桃体には生後体験の結果から個々に様々な利益不利益の判定基準が学習獲得され、我々はその蓄積によって生後環境に適応したより多彩な接近と回避の選択を行うことができるようになります。

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シマウマが肉食動物を見たら逃げるのも扁桃体が不快感情を知覚するためである

 

扁桃体は学習する過去の報酬体験によって取り組む態度が変わる

ということは、同じ対象であったも人それぞれ経験と結びつけてものの印象を作っているため、行動面において接近するか回避するかは人それぞれ違ってくるということがわかると思います。例えば、テスト勉強をするという行為に対して、テストで良い点を繰り返しとったことがある人と、そうではない人とでは、テスト勉強をするときの心理的態度が変わってくるでしょう。さて、ここで快・不快と繰り返し感情を繰り返すことで行動の仕方も変わってくるということを具体例を挙げて説明していこうと思います。

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<快感情の影響>*2

1.行動へのスピードが上がる
2013年の京都大学櫻井教授の研究で、動物が報酬を強く期待して行動を素早く正確に行う時、報酬の情報を表す扁桃体と行動の調節を担う海馬の間で、高速でリズミカルな活動が同調して現れることやその同調の強さと行動の素早さが関係していることがわかりました。このことから、快感情は素早い行動を促し、生産性を上げるとも言えるかもしれません。*3
2.創造性などの思考能力が高まる
フリデリクソン(1998,2001)の研究によると、何かの対処に対してポジティブ感情を持つ機能として、拡張ー形成理論(broden-and-build theory)というものを提唱して、最近の心理学や神経科学の研究で実証されつつあります。例えば、快感情は独創的な思考を引き出す(Issen,1985)、柔軟性のある包括的な考え方を促進すること(Issen,1987)、受容性を高める(Estranda,Isen & Young,1997)など、多くの効果が実証されています。*4*5

これらの研究からわかること

本記事では、快・不快感情と扁桃体の関わり、そして感情の影響について簡単に述べてきましたが、まず言えることとしては、不快感情を持った状態で何かを行うと、低い生産性で取り組むことになってしまい、結果的に低い報酬しか得ることができず、それがさらに強い不快感情につながってしまう恐れがあるということです。ですから、何かに対してやりたくないと感じる時は素直にその気持ちを受け止めて感情の分析をしてみたり、以前行為に伴う当たり前としていた報酬について考えなおしたりすると良いかもしれません。例えば、勉強はテストで高得点を取るという期待を持って勉強し続け、それが不快感情を生み出しているのであれば、そもそもの考えかたを変えて報酬を達成しやすくコントロールしやすいもの(例えば、タスクの消化を報酬としたり、勉強することで以前より理解が深まる)を新しい報酬とすることで、取り組む前から存在する心理的な障壁を取り除くことができるかもしれません。*6
 

*1:参考文献:感情心理学・入門(2015)

*2:さらに包括的な快感情の理解は、快感情研究でも有名なIsen教授のこちらのまとめを参照するといいかと思います。

http://elsur.jpn.org/reading_notes/Isen99.pdf

*3:報酬の期待と行動を結びつける脳のリズムを検出-報酬予測にもとづき行動を調節するために働く脳内相互作用を解明http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/131203_1.htm

*4:ただし、過度の快感情というのはリスクを低く見積もる行動につながるという研究もあります。こちらの研究は感情状態とリスク認知の関係を分析し、不快感情はリスク志向を促進させるという結果が出ています。

http://www.psych.or.jp/meeting/proceedings/76/contents/pdf/2EVA38.pdf

*5:不快感情のメリットもある。例えば、” 有益になり得るネガティブな感情、つまり通常ポジティブな変化に利用できる感情には、罪の意識、怒り、悲しみ、不安、ねたみ、孤独などがある。空虚な感情とは違って、これらの感情は現実に基づいていることが多い。何かが実際に起きて人をそのように感じさせているわけだ。そして、悪い行動(自身の行動であれ他人の行動であれ)から自らを守る必要があるとの警告を発している。”と書かれているように、高度改善を促すメリットがあげられる。-ネガティブ感情はなぜ必要か?

jp.wsj.com

*6:反復的にもたらされる報酬を期待し、それ以外の報酬がないと盲目的になってしまうと報酬がたまたま達成できかった時に大きな不快感情が伴う恐れがあることもよく理解しておく必要があります。expected emotion(期待感情)に関してはいつか記事を書こうと思うが、とりあえずこの辺の記事がわかりやすくまとまっているので、あげておきます。

Emotions in decision-making - Wikipedia

。論文ですと、この辺が参考になると思います。

http://www.cmu.edu/dietrich/sds/docs/loewenstein/RoleEmotionEconBehav.pdf